丹羽宇一郎 前中国大使の不見識

投稿日:2012-12-30 - 投稿者(文責):mumeijin

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日本經濟新聞 朝刊[平成24年(2012)12月29日(土)]

他人の悪意に対して常に羊の様に従順な態度をとるとどうなるか。悪意の者の標的となりそのまま付け込まれ続けてしまう。悪意の人物の改心を期待する方が間違っているのだ。

例の「尼崎事件」の詳報を聞いた時に私はその感を強くした。結果論となってしまうがあの犯罪行為の連鎖を絶ち切る為には、有る種の犠牲を覚悟してでもどこかで立ち向かわなければならなかったのだ。それが唯一犯人共の凶行から生き残る術であっただろうし、どこかに反撃の活路は無かったのだろうかという疑問を抱くのである。自裁したとされる首謀者の案外に小心な末路を知るとさらにそれが可能であったように思う。だがそれにしてもインタビューに登場する被害者家族の誰もが朴訥で大人しい雰囲気の優しげな人々であった事がさらに痛々しい思いを誘う。本当に痛ましい事である。首謀者の女がおとなしい性格の人達と弱みを見抜く能力に長けていたという報道が理解出来る。しかしまたその一方で犠牲となった家族の“弱さ”を責める事も出来ないと思ってしまうのだ。

相手が弱いと判断するとあの手この手で挑発を繰り返す隣国中国に対する我が国の対応は一貫してまさに羊の態度であったからである。尼崎事件で加害者共に成す術がなかった気の毒な被害者とその家族の姿に、私はこれまでの日本政府の事勿れ主義的、敗北主義的な姿勢を重ね合わせてしまうのだ。

丹羽宇一郎という民間企業で社長、会長、相談役を歴任したのちに中国大使となった人物がいる。
菅直人民主党内閣による「脱官僚」の目玉人事として岡田克也外務大臣の推挙により中国大使に丹羽宇一郎氏が起用されたのは平成22年(2010)6月の事である。対中ビジネスを活発に行っている伊藤忠商事出身の丹羽宇一郎氏の登用は言わば鳴り物入りであった。だが伊藤忠商事を人質に取られていたといわれても仕方がないほど、在任中から言動に問題の多い大使であった。そして事実上更迭される形で丹羽氏はその職を解かれ今月退任した。その丹羽氏は今月20日、後任の木寺昌人中国大使に対してこの様に語っている「これ以上(日中関係が)悪くなることはないから、良いときに出かける。これ以上悪くしてはいけないし、そういうこともないと確信している」。自らの失態の数々を棚に上げたうえでの当て付けがましい物言いで有る。しかし「これ以上悪くならない」とは相変わらずなコメントであるが本当にそうだろうか。中国共産党の“悪意”はあれで終わるようなものなのか。

12月29日(土)の日本経済新聞朝刊において 丹羽宇一郎氏は「尖閣国有化 尚早だった」として「尖閣国有化も複数の中国政府高官と会談したが『日本は領有権問題が無いと言って終わり。話も出来ない』と言っていた。こちらは白と言い、相手は黒と言うなら、だれが見ても係争は有る。争いを認めて対話の場を設けなければ、いがみ合いが続くだけだけだ。」と自説を主張している。

建国以来領土拡張のために版図回復と称し東トルキスタン、チベット、南モンゴルを侵略、当初友好国と位置付けていた隣国のインド、ソ連、ヴェトナムとの武力衝突をも辞さなかった覇権主義国中国は“奇妙な事”に「1971年(昭和46)12月30日」まで尖閣諸島の存在には全く無関心であった。にもかかわらず後に創作した主張を基に現在自国領土であることを一方的に宣言し、日本に対する挑発を繰り返し挙句の果てに「領土問題が存在すると言え」と恫喝を加えている。中国共産党の当座の狙いは尖閣諸島に係争が有ることを日本政府に認めさせて中国の発言権を得ようとするのが目的である。誰がみてもそう理解するはずである。

丹羽宇一郎氏にお訊ねしたい。自宅に強盗が侵入し一方的に所有権を主張したとする。
「自宅の所有権について丹羽氏と強盗の間には不動産、動産に対する所有権問題が存在しているのか」と。普通ならば質問自体に立腹するだろう。もし強盗との間に“所有権問題”の存在を認める(そもそも有り得ない仮定ではあるが)ならば、世間は丹羽氏の正当に所有する土地、家屋、家財一式に対する丹羽氏の所有権の主張そのものに疑問を抱く。「これはもしかすると強盗ではなく相続権を持つ身内同士のいざこざなのではないか。(強盗側にも)一定の所有権が存在していたのか」と。「領土問題が存在する」と主張する中国共産党の狙いはまさにそれだ。言うまでもなく既に丹羽氏の「日中間に係争はある」という主張は中国共産党に歓迎されている。侵略を受けている日本が「領有権を巡る争い」を認めてどうする。丹羽宇一郎大使が先頭に立ち中国に対する強硬な抗議を行い、同時に世界に日本の主権を侵犯する中国の侵略行為の事実を発信するのが筋だったのではないか。

嘘の上に嘘を重ねて尖閣諸島を中国の領土であると国内外で宣伝工作を繰り返す強盗国家・中国の一方的な侵略を「日中間の領土問題」に昇格させることは誤りである。いずれ中国はそれを根拠として“遭難した支那人漁民”救援目的から始まり「中華人民共和国台湾省釣魚島」に上陸する積りで有ろう。その時点で世界は中国の侵略行為を、日本と中国との間の領土係争として認定する。「領有権問題が有る」事を認めるという事は、中国の領有権保持の可能性をも認める事につながるという簡単な理屈がなぜかこの丹羽氏には理解出来ない。強盗に対して自身の財産の所有権を話しあう必要もなければ「係争」を認める必要もない。

これまでの日本政府の正当な主張をあっさりと覆した事でその責任を問われ事実上更迭された上での大使退任であるにもかかわらず、その後も得意気に中国共産党の主張に沿った言説を得々と語る丹羽宇一郎氏の無節操、無自覚な態度には呆れるばかりである。

これまで中国は様々な手法で尖閣諸島周辺で日本を挑発してきた。今後も彼等は軍事力を誇示させ、日本の反応を探りながら徐々に尖閣領有の既成事実を積み重ねてくるだろう。その時に必要な態度とはひたすら無事ばかりを望む様な消極的な方法ではない。尖閣諸島周辺における軍事力の増強こそが(強きに弱く、弱気に強い)中国の日本に対する挑戦に対する最も有効な姿勢である。丹羽宇一郎氏の一見すると宥和的、平和主義者の如きその実は事勿れ主義に徹するだけの覚悟の無い人物にひきずられる事こそが日本国民を危険に陥れる因子ということは肝に銘じておきたい。.
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1950年5月、中国外務省作成『対日和約(対日講和条約)に於ける領土部分の問題と主張に関する要綱草案』原文コピー。【写真】(右)表紙、(左)P75に「尖閣諸島」の文字が。現在、中国共産党が尖閣諸島を「台湾の一部」として自国領土と主張する根拠は後付けの物である。何の事は無い、中国は建国当時から尖閣諸島が琉球(沖縄)附属島嶼と認識していたのだ。中国外務省档案館(外交史料館)収蔵


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