[記録]蔡英文総統就任~演説概要(上)~

投稿日:2016-05-23 - 投稿者(文責):mumeijin

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【感謝と責任】

台湾は再び、民主的で自由な生活方式を強い信念で守ることを世界に告げた。人々が新総統、新政権に期待するのは『問題の解決』だ。台湾の状況は困難であり、国民同胞全員にこの国の未来を一緒に担うよう求める。

国家は指導者によってではなく、国民全体の奮闘によって偉大になる。総統が団結させるべきは国家全体だ。団結は変化のためであり、この国が切実に期待するものだ。先入観と過去の対立を捨て、新時代の使命を成し遂げよう。

総統として宣言する。私と新政権は、この国の改革を導き絶対に退かない。

【若者のためにより良い国を作る】

年金制度は改革せねば破産する。教育制度は社会の動きと乖離している。エネルギーと資源は限りがあり、経済は勢いに欠け、旧来の受託生 産方式はボトルネックに直面している。新たな経済成長モデルが必要だ。人口構造は急速に高齢化しているが、高齢者介護制度は完備されていない。出生率は下 がり続けるが、託児制度はめども立たない。環境汚染は深刻だ。国家財政は楽観できない。司法は人々の信頼を失っている。食品安全問題は家庭を悩ませてい る。貧富の格差は深刻化し、社会のセーフティーネットは穴が多い。最も重要なのは、若者の低賃金だ。彼らの人生は未来への無力感で満ちている。

若者の未来は政府の責任だ。構造が変らなければ、若者全体の境遇は良くならない。私は一歩ずつ、根本の構造からこの国の問題を解決する。若者の昇給を直ちに実現することはできないが、新政権が直ちに行動を開始することを約束する。

若者の境遇を改善することは、国家の境遇を改善することだ。若者に未来がなければ、その国の未来もない。若者が苦境を突破することを助け、世代間の正義を実現し、より良い国を次の世代に引き継ぐことが、新政権の責任だ。

【経済構造の転換】

より良い国を作るため、新政権は以下のことを成し遂げる。まず、台湾の経済構造の転換は、新政権が負うべき最も困難な使命だ。むやみに卑下し自信 を失ってはならない。台湾には他国にない優位性がある。海洋経済の活力と強靭(きょうじん)性、高い品質の人材資源、実務的で信頼できるエンジニア文化、 整った産業チェーン、活発な中小企業、絶対不屈の創業精神がある。

台湾経済を完全に生まれ変らせるには、今から決心し、勇気を持ってもう一つの道に歩き出す必要がある。台湾の経済発展の新たなモデルを打ち出すことだ。

新政権は、イノベーション、就業、分配を核心的な価値とし、持続的な発展を追求する新たな経済モデルを打ち立てる。改革の第一歩は、経済の活力と自主性 を強化し、世界および地域との連携を強め、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)・東アジア地域包括的経済連携(RCEP)を含む多国間および二国間の経 済協力・自由貿易交渉に積極的に参加し、『新南向政策』を進め、対外経済の構造と多元性を高め、過去の単一市場に過度に依頼していた現象に別れを告げることだ。

新たな成長エネルギーを刺激してこそ、目前の景気低迷を突破できる。輸出と内需を2つのエンジンとし、企業の生産と人々の生活を表裏一体として、対外貿易と地元経済を緊密に結び付ける。

5大イノベーション研究開発計画を優先的に推進し、これらの産業により、台湾の世界的競争力を新たに生み出す。労働生産性を高め、労働者の権益を保障することで、賃金と経済成長を同時に上昇させる。

環境への責任も忘れてはならない。経済発展の新たなモデルは国土計画、地域の発展と環境の永続性と相互に結びついている。汚染管理を厳しく査定し、台湾 を循環型経済に向かわせ、廃棄物を再生資源に転換する。エネルギーの選択は永続性の概念で段階的に調整する。気候変動、国土保全、災害防止に厳粛に臨む。 なぜなら地球は一つしかなく、台湾も一つしかないからだ。

【社会のセーフティーネット強化】

2つ目は台湾社会のセーフティーネットの強化だ。近年、児童・少年の安全に関する事件と無差別殺人事件が発生し、社会を驚かせた。政府は驚いてい るだけでなく、思いやりが必要だ。誰も被害者家族の代わりに痛みを引き受けることはできない。だが、政府、特に第一線にいる者は、被害者と家族に、政府は 彼らの側にいると感じさせる必要がある。

政府はさらに解決の方法を提示すべきだ。悲劇の再発を防ぎ、治安、教育、心の健康、ソーシャルワークなどの各方面から(セーフティーネットの)穴を防ぐ。特に治安と薬物対策に最も厳粛な態度と行動で立ち向かう。

年金改革は台湾の生存と発展に関する肝要な改革であり、躊躇しても拙速でもいけない。陳建仁副総 統が議長を担う「年金改革委員会」は 着々と準備中だ。過去の政権も一定の努力はしたが、社会の参与を欠いた。新政権は集団的な協議を開始する。年金改革は、協議ですべての関係者を団結させる 過程でなければならない。

このため、『年金改革国是会議』を開催する。異なる階層と職業の代表が協議する。1年以内に実行できる改革案を提示する。労働者でも公務員でも、退職後の生活は公平な保障を受けられるべきだ。

高齢者介護では、優良で安価で普及できるシステムを築く。政府が計画し、民間がコミュニティー精神を発揮するのを奨励し、社会の相互扶助の力を通じ、適切で完全な体系を整える。高齢者介護は完全な自由市場にはできない。責任を持ち、一歩ずつ計画・執行し、超高齢社会の到来に備える。

 【社会の公平と正義】

3つ目は、社会の公平性と正義だ。新政権は引き続き市民社会と協力し、政策を多元性、平等、開放、透明性、人権という価値に合致させ、台湾の民主制度を深化・進化させる。

新たな民主制度を始める上で、過去に向き合う共通の方法を探し出す必要がある。総統府に『真相・和解委員会』を設け、最も誠実かつ慎重な態度で過去の歴史を処理する。移行期正義を追求する目的は社会の真の和解であり、全ての台湾人にその時代の過ちから学ばせることだ。

真相の調査と整理から始め、約3年以内に移行期正義の調査報告書を完成させる。調査が示す真相に基づき、後続の作業を行う。真相を掘り出し、傷跡を癒し、責任を明確にする。その後は、過去の歴史は台湾が分裂する原因ではなくなり、共に前進するための力となる。

同じ原則で、先住民の問題に向き合う。この島にやってきた順番を忘れてはならない。新政権は謝罪の態度で先住民の関連する問題に向き合い、歴史観の再建、段階的な自治の推進、言語と文化の復活、生活支援の強化に取り組む。

司法改革も積極的に進める。司法は人々の信任を失い、犯罪に対応できず、正義を実現する最後の一線の機能を失ったと、多くの人々が感じている。

新政権の決意を示すため、10月に『司法国是会議』を開く。人々の参加を通じ、社会の力を呼び込み、司法改革を推進する。司法は法律家だけの司法であってはならず、全国民の司法であるべきだ。司法関係者だけでなく、全国民が参加する改革だ。


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