【参加】台湾研究フォーラム関西主催「第15回 日本と台湾を考える集い」

投稿日:2010-12-18 - 投稿者(文責):mumeijin

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【主催】台湾研究フォーラム関西 http://taiwankenkyuforumkansai.blogspot.com/
【開会】13:30~
【報告】五大都市選の映像と画像
【講演】14:10~「台湾五市長選挙と今後の展望(90分)」 
     講師 伊原吉之助 帝塚山大学 名誉教授
【意見交換】15:55~

 伊原吉之助 名誉教授は欧米・日本・中国・台湾社会思想史の碩学。著作『台灣の政治改革年表・覚書』は資料的価値の高い労作として知られる。
 
「台灣のなかに日本の運命をみて、日本のなかに台灣の運命をみる」と語る伊原吉之助先生

 
 五大都市選について精緻な分析をなされました。 ↑ 自由時報(11月28日号)


 講演の後半、民主進歩党の成立状況を論述して80年代に米国による独裁体制(フィリピン・韓国・中南米等)における民主化支援の一環として台湾もその対象となり、危機感を抱いた中国国民党が民主主義を演出して台湾での体制延命の為に党外人士による民進党結党を促した側面も指摘。「中華民国体制」内での選挙で有る事の限界をも述べられておられました。

 また、日本が台湾の前途に対し冷淡過ぎる事。旧宗主国 日本には台湾に対して配慮すべき義務がある事、台湾に限らず東アジアの安定にもっと配慮すべきではないかという事も仰られていました。「利己主義が身を滅ぼすように、国際関係も国益追求だけでは不足している。共存共栄の立場で発言すべき」だと。


【講演の中から】
 国際連合(United Nations)の国連憲章(1945年6月26日調印、1945年10月24日に発効)第5章第23条は安全保障理事会の常任理事国を規定しているが、その条文内では現在も「中華民国」が生きている。

1. 安全保障理事会は、15の国際連合加盟国で構成する。中華民国(The Republic of China)、フランス、ソヴィエト社会主義共和国連邦、グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国及びアメリカ合衆国は、安全保障理事会の常任理事国となる。

【講演の内容から】
伊原先生「大陸で建国された中華民国と、台湾に“遷都した中華民国”は異なる存在である。国共内戦で中国共産党に敗れた中国国民党は、遷都と称し(当時まだ日本領であった)台湾に敗走。臨時首都を台北に移した蔣氏政権は「中華民国在台湾」を称する亡命政権と化した(1)。そして大陸でつくられた中華民国憲法を台湾においてそのまま継承させた蔣氏政権下では、清朝~中華民国支配を忌避しロシアの援助で独立を果たしたモンゴル国~モンゴル人民共和国を「外蒙古」とみなして独立自体を認めていなかった。2002年、陳水扁政権が実質的にモンゴル独立を認めるまで、同国は中華民国領であるという虚構が公式見解であったのである。なお内蒙古と呼ばれる南モンゴル地域は1947年に中華人民共和国内モンゴル自治区として併合されてしまう。

(1)来年(2011)は辛亥革命100周年であり、馬政権の下で「建国100周年」を祝う「中華民国」。しかし同国は1949年10月の時点で滅亡、38年間の歴史に幕を閉じる。これが歴史的事実である。


 今年3月に発表された「中華民国」建国100年のロゴ。
『中華民国 精彩一百(中華民国の素晴らしい百年)』とあるが「建国」の文字は無い。台湾を中華人民共和国の一部と繰り返す中国共産党に配慮した、との風説有り。なお中華民国を歴史用語として理解している台湾人は、中華民国を読みが似ている「中華冥國」と揶揄表現しているようです。

【参考】中華民國建國一百年慶祝活動籌備委員會 http://100.president.gov.tw/
    (偽史としての現象を観察するには興味深い)


〇また選挙戦の特筆すべき点として、台中市の民進党候補 蘇嘉全氏の予想外の善戦、そして民進党候補・元民進党候補・国民党候補の三つ巴の選挙戦となった高雄市で圧勝した陳菊候補の勝因を解説されまし。
 北部での民進党勝利の為、蔡英文候補を台北市に、蘇貞昌候補を新北市で出馬すべきではなかったかという御意見には納得させられました。なお敗北したにもかかわらず、蔡英文氏が新北市という農村圏で予想外の健闘を果たしたことにも言及、台灣政界について大変勉強になりました。

 

 

 16時40分から行われた、お楽しみ抽選会。蔡英文民進党主席グッズ・蘇貞昌元首相携帯ストラップ・飛輪海(フェイルンハイ)ポスターなど、今回もいろいろな台湾グッズを頂きました。感謝!

 

 その後、17時頃から近くの居酒屋で伊原先生を交えて忘年会となりました。この席では、先生が講演中に言及されていた「建国党の挫折」に関して、そして「台湾治安維持事件」と「台湾民政府の動向」に関する伊原先生の御意見を拝聴しました。台湾に対する深い知識、鋭い観察力と明晰な洞察力。そして何より日台の共栄とその前途を憂い想われている伊原吉之助先生。謦咳に接する事が出来、とても有難い一日となりました。

 
 印象的だった在日台湾人
 本日知り合った20代の台湾人留学生。御本人が語るには日本に留学した理由を「不純な動機だった。祖父が遺した“日本語で書かれた日記”これを読解してみたかったから」と話されました。しかし三年間の留学で日本語をマスターした彼女がその日記を再び開く事はなかったそうです。
 日本語を読める今、日本人だった祖父の思い出をそっとしておきたいと思い直したそうです。

【お薦めリンク先】
 21世紀日本アジア協会 伊原吉之助教授の読書室
http://www.jas21.com/athenaeum/profile.htm

河内長野市商工会青年部オフィシャルサイト