リチャード・ギア発言の真当さ

投稿日:2011-06-04 - 投稿者(文責):mumeijin

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 今朝の産経新聞は米国下院外交委員会が「アジアの宗教・民主主義・人権」をテーマに公聴会を開いたことを報じていた。その場では映画俳優のリチャード・ギア(Richard Gere)氏によるチベットの人権問題の証言とオバマ大統領の中国融和の態度を批判したことが注目を浴びていたそうである。

―――中国共産党政権はチベット民族の基本的人権を認めず、世界人権宣言だけでなく自国の憲法にも違反している

―――共産党支配を批判する者は、たとえ平和的な言論でも不当に拘束され、拷問にかけられる。中国の弾圧に抗議することが米国人としての道義だ

―――胡錦濤国家主席はチベット自治区の党委書記だったころからチベット民族に敵意を抱いていることを指摘したい

―――米国の歴代大統領はダライ・ラマのワシントン訪問の際には会見をしてきた。オバマ大統領の判断は誤りだ(*1)

―――中国は弱い態度をみせる側にはさらにつけこんでくる

 それぞれ断片的なコメントではあるが、ギア氏の発言のどれもが真当な意見だと思う。著名な俳優であると共に仏教徒でありダライ・ラマ法王の報道官役を務めているギア氏はチベットにおける中国の人権弾圧に対する一連の抗議活動が原因で中国への入国が禁じられた米国人でもある。中国入国禁止を通告されている欧米の芸能界の人物には『クンドゥン』のマーティン・スコセッシ監督や「独立、チベット、チベット、旗を掲げよう」発言のビョーク、そしてギア氏と同様にチベットにおける人権侵害行為を議会公聴会で積極的に告発したハリソン・フォード氏等がいる。

前大統領のジョージ・W・ブッシュ政権時、米国議会はダライ・ラマ法王に対し民間人に与えられる最高位の「議会名誉黄金勲章」を授与して中国から反発を受けている。

「中国の反発」とは中国共産党が痛いところを突かれた際の条件反射くらいの意味だと思えばよい。またブッシュ大統領自身がダライ・ラマ法王との公式会談を行うなど米国ではダライ・ラマ法王は国賓として遇されている。米国で国賓待遇とは民主主義国家の元首級だろうか。なお中国との関係悪化を承知で14世ダライ・ラマ法王の亡命先となったインドでは貴賓として接遇され、中印紛争を経たその後もインドは多くのチベット人難民を受け入れている。

これが世界最大の民主主義国家を誇るインドの矜持であるとともに、核兵器保有国家であるインドの実力なのだろう。言うまでもなくインドにとっての仮想敵国は中国であり、米国のこの地域での同盟国ではあるが実態は有数の反米国家として知られるパキスタン・イスラム共和国である。インドにとり隣国の二国は敵性国家であり同時に核保有国であるのだ。この政治の現実を現在の日本人は感じる事が出来ないのでないか。なおパキスタン軍の装備の殆どが中国製だそうだ。

 堂々と意見を述べ、信念を貫く人物は信頼される。それは勇気が要ることだからだ。それを再確認させられたのが今回のリチャード・ギア氏の態度であった。“真当な人”というのは貴重な存在なのだ。それとは真逆の精神というのが、毎年首相の靖國神社参拝に反対し中国政府の歓心を買おうと色目を使う日本の経済人であったり、北京で独裁国家の権力者と握手をする事に喜びを感じる無自覚で無節操な143名もの民主党議員であったりする。彼らの訪中の目的は一体何だったのだろうか。胡錦濤への抗議一つ出なかったとすれば、その党名が泣いているだろう。しかしそもそも中国が健全で優良な市場であるというのは本当なのか。どこまでが事実なのか相当疑わしい。

(*1)オバマ大統領が2年前の訪中前に中国に対する配慮からダライ・ラマ法王との会談を行わなかったとされる出来事を指すとのこと。


『RED CORNER』1997年米国作品 邦題は『レッド・コーナー~北京のふたり~』

日本では殆ど話題にならなかったが党治国家中国の一面を描いた作品として観るべき点は多い作品。当然ながら北京での撮影は行われていない。これは登山家ハインリヒ・ハラーと14世ダライ・ラマ法王の友情と中国共産党によるチベットへの軍事侵攻を描いたジャン=ジャック・アノー監督『チベットの七年(Seven Years in Tibet)』が南米等で撮影されたのと同じく一党独裁政権と反民主主義路線を堅持する中国を真っ向から批判する作品だからである。

 下の動画はチベットでの人権侵害を告発する米国の俳優達。登場順にR・ギア、スティング、H・フォード、アダム・ヨーク、ゴールディ・ホーン、アラニス・モリセット、ジュリア・ロバーツ。社会的に影響力のある著名人がチベット人の為に国連人権宣言を朗読している。これほど価値ある行動はないだろう。そして不条理と不正義が横行するこの世界で、それだからこそ人間の尊厳を訴え続けるということは必要なのだと思う。

Why are we silence,when Tibet need our voices
(なぜ私達は沈黙しているのだ。チベットが我々の声を必要としている時に)

聯合國(=国際連合)《世界人権宣言》

第一条
すべての人間は、生まれながらにして自由であり、かつ尊厳と権利とについて平等である。人間は、理性と良心とを授けられており、互いに同胞の精神を持って行動しなければならない。

第5条
何人も拷問又は残虐な、非人道的な若しくは屈辱的な取り扱い若しくは刑罰を受けることはない。

第19条
すべて人は、意見及び表現の自由に対する権利を有する。この権利は、干渉を受けることなく自己の意見を持つ自由並びにあらゆる手段により、また、国境を越えると否とにかかわりなく、情報及び思想を求め、受け、及び伝える自由を含む。


ダライ・ラマ法王と米国大統領の会談はThe Voice of America(VOA)のチベット語放送等を通じてチベット人は皆知っているそうです。それによってチベット人は自国での人権侵害に米国が一定の注意を払っている事を知り勇気付けられている。
今日は第二次天安門事件(1989年)から22年目の日である。89年の3月に、チベット人による大規模な抗議活動が行われた。それに続いて天安門事件が起こり、10月にダライ・ラマ法王がノーベル平和賞を受賞されている。しかし中国における人権問題は当時よりも更に悪化しているという声が多い。北京五輪(2008年)、上海万博(2010)の開催後も中国は依然その独裁体制を維持したままである。期待した変化はなかったのだ。


 

河内長野市商工会青年部オフィシャルサイト