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遅ればせながら『被出賣的台灣』を鑑賞しました。英語の題名は『Formosa Betrayed』、邦訳は『裏切られた台灣』。
『被出賣的台灣』は北米で昨年2月28日に、台灣で8月6日に公開された米国映画です。昨年9月に訪台した際には台北市内では信義威秀影城(台北市松壽路16號)と欣欣秀泰影城(台北市林森北路247號)の2館のみの上映となっており、鑑賞する予定だったのですが、都合でかなわなくなっていました。その後10月に台灣でDVDが発売されています。しかし現在のところ日本での公開やDVD化といった事は聞きません。
中国国民党政権下で引き起こされた陳文成事件・美麗島事件・江南事件を題材に台灣近現代史の白色テロの時代を描いたポリティカル・ムービーの佳作です。日本での上映の可能性は低い様に思いますので、台灣に行かれる際はぜひ現地でDVDを購入される事をお薦めします。
以下は沖縄タイムスの記事の引用です。
[アメリカ] 台湾の歴史知る契機に 映画「裏切られた台湾」上映 制作者ツァオ氏に質疑
米国を皮切りに劇場公開されている映画「Formosa Betrayed=裏切られた台湾」が4日、制作者のウィル・ツァオ氏を迎え、ワシントンの劇場でも上映された。台湾人や台湾系米国人、親台派の米国人らが訪れ、鑑賞した。
映画は1980年代、米国で台湾の民主化活動を続けていた台湾系大学教授がシカゴで殺害された事件を追い、台湾に渡ったFBI捜査官の実話を基に制作された。台湾人のアイデンティティー、台米の歴史を描き出している。
上映後はツァオ氏へ質問が相次いだ。「米国生まれで2世のぼくは両親から中国人でなく台湾人と聞かされて育った」「(政治的な)事件が主要メディアで語られることが少なく、多くの人に知ってほしかった」と制作動機を述べた。「なぜ『裏切られた台湾』なのか」との質問に、「裏切られた台湾」(ジョージ・カー著)を挙げ、「台湾は多数の国に裏切られた、というのが事実だ」と答えた。
「日本でもぜひ映画を公開したい」というツァオ氏は、クリントン元大統領の行政やFAPA(北米台湾人の台湾民主化・独立活動団体)を経て、俳優になった異色の活動家。製作費800万ドルの約4分の3が台湾系投資家や団体から集められており、北米台湾人の力を物語っている。
「裏切られた台湾」の著者の米国人学者ジョージ・カーは英語版の沖縄歴史教科書ともいわれる「The History of an Island People(沖縄の歴史)」でも知られる。
沖縄タイムス(平成23年4月19日) http://www.okinawatimes.co.jp/article/2010-04-19_5845/
映画は1983年(昭和58)の台灣と米国を舞台にしている。当時の台灣は蔣経国統治下、日本は中曽根康弘首相、米国はR・レーガン大統領の時代。冷戦末期、そして台灣民主化まであと数年の時代である。作中では北京語・英語、そして台灣語が使用されており、主要登場人物でもある国民党の若い調査局員の顔立ちや設定などが馬英九氏に似ているのは偶然ではないだろう。恐らく揶揄を交えた意図的なものに思えた。
ギリシャ人映画監督のコスタ・ガブラスはその作品のなかでファシズム国家での国家による犯罪を描いた。ギリシャを舞台にした『Z』、南米ウルグアイの『戒厳令』、チリでの『ミッシング』。そしてAdam Kane(亜當肯恩)監督は『被出賣的台灣』でようやく中国国民党の白色テロを本格的な作品として世界に紹介したのである。
下 左:George H. Kerr(1911‐1992)の『FORMOSA BETRAYED』。Kerr氏は戦前旧制台北高校・台北高商・台北一中、戦中には米国海軍将校、戦後駐台北副領事として台灣の歴史的な転換期を目撃している。その見聞をまとめたものが『FORMOSA BETRAYED』でありその資料的価値は非常に高いと思われる。なお監修者の川平朝清氏は台灣生まれの沖縄育ちの元NHKマン。ジョン・カビラ、川平慈英兄弟の父親だそうです。題名は同じく『裏切られた台灣』ではあるが映画の原作とはいえない。全くの別物である。
【被出賣的台灣】台灣版預告
【関連】 〇『裏切られた台灣(被出賣的台灣、Formosa Betrayed)』DVDが台灣で発売!! http://ilha-formosa.org/2010/10/31/formosa-betrayed/
〇「以徳報怨」-蔣介石神話と保守派日本人- http://ilha-formosa.org/2011/01/09/itokuhouon/
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遅ればせながら『被出賣的台灣』を鑑賞しました。英語の題名は『Formosa Betrayed』、邦訳は『裏切られた台灣』。
『被出賣的台灣』は北米で昨年2月28日に、台灣で8月6日に公開された米国映画です。昨年9月に訪台した際には台北市内では信義威秀影城(台北市松壽路16號)と欣欣秀泰影城(台北市林森北路247號)の2館のみの上映となっており、鑑賞する予定だったのですが、都合でかなわなくなっていました。その後10月に台灣でDVDが発売されています。しかし現在のところ日本での公開やDVD化といった事は聞きません。
中国国民党政権下で引き起こされた陳文成事件・美麗島事件・江南事件を題材に台灣近現代史の白色テロの時代を描いたポリティカル・ムービーの佳作です。日本での上映の可能性は低い様に思いますので、台灣に行かれる際はぜひ現地でDVDを購入される事をお薦めします。
以下は沖縄タイムスの記事の引用です。
[アメリカ]
台湾の歴史知る契機に 映画「裏切られた台湾」上映 制作者ツァオ氏に質疑
米国を皮切りに劇場公開されている映画「Formosa Betrayed=裏切られた台湾」が4日、制作者のウィル・ツァオ氏を迎え、ワシントンの劇場でも上映された。台湾人や台湾系米国人、親台派の米国人らが訪れ、鑑賞した。
映画は1980年代、米国で台湾の民主化活動を続けていた台湾系大学教授がシカゴで殺害された事件を追い、台湾に渡ったFBI捜査官の実話を基に制作された。台湾人のアイデンティティー、台米の歴史を描き出している。
上映後はツァオ氏へ質問が相次いだ。「米国生まれで2世のぼくは両親から中国人でなく台湾人と聞かされて育った」「(政治的な)事件が主要メディアで語られることが少なく、多くの人に知ってほしかった」と制作動機を述べた。「なぜ『裏切られた台湾』なのか」との質問に、「裏切られた台湾」(ジョージ・カー著)を挙げ、「台湾は多数の国に裏切られた、というのが事実だ」と答えた。
「日本でもぜひ映画を公開したい」というツァオ氏は、クリントン元大統領の行政やFAPA(北米台湾人の台湾民主化・独立活動団体)を経て、俳優になった異色の活動家。製作費800万ドルの約4分の3が台湾系投資家や団体から集められており、北米台湾人の力を物語っている。
「裏切られた台湾」の著者の米国人学者ジョージ・カーは英語版の沖縄歴史教科書ともいわれる「The History of an Island People(沖縄の歴史)」でも知られる。
沖縄タイムス(平成23年4月19日)
http://www.okinawatimes.co.jp/article/2010-04-19_5845/
映画は1983年(昭和58)の台灣と米国を舞台にしている。当時の台灣は蔣経国統治下、日本は中曽根康弘首相、米国はR・レーガン大統領の時代。冷戦末期、そして台灣民主化まであと数年の時代である。作中では北京語・英語、そして台灣語が使用されており、主要登場人物でもある国民党の若い調査局員の顔立ちや設定などが馬英九氏に似ているのは偶然ではないだろう。恐らく揶揄を交えた意図的なものに思えた。
ギリシャ人映画監督のコスタ・ガブラスはその作品のなかでファシズム国家での国家による犯罪を描いた。ギリシャを舞台にした『Z』、南米ウルグアイの『戒厳令』、チリでの『ミッシング』。そしてAdam Kane(亜當肯恩)監督は『被出賣的台灣』でようやく中国国民党の白色テロを本格的な作品として世界に紹介したのである。
下 左:George H. Kerr(1911‐1992)の『FORMOSA BETRAYED』。Kerr氏は戦前旧制台北高校・台北高商・台北一中、戦中には米国海軍将校、戦後駐台北副領事として台灣の歴史的な転換期を目撃している。その見聞をまとめたものが『FORMOSA BETRAYED』でありその資料的価値は非常に高いと思われる。なお監修者の川平朝清氏は台灣生まれの沖縄育ちの元NHKマン。ジョン・カビラ、川平慈英兄弟の父親だそうです。題名は同じく『裏切られた台灣』ではあるが映画の原作とはいえない。全くの別物である。
【被出賣的台灣】台灣版預告
【関連】
〇『裏切られた台灣(被出賣的台灣、Formosa Betrayed)』DVDが台灣で発売!!
http://ilha-formosa.org/2010/10/31/formosa-betrayed/
〇「以徳報怨」-蔣介石神話と保守派日本人-
http://ilha-formosa.org/2011/01/09/itokuhouon/