【付記】「從尖閣海域致台灣朋友/尖閣海域から台湾へ送ったメッセージ」-永山英樹台湾研究フォーラム会長の声明について(下)-

投稿日:2012-08-24 - 投稿者(文責):mumeijin

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 永山英樹台湾研究フォーラム会長が指摘する「尖閣諸島が沖縄県から台北州へ編入云々」という箇所について、日本人には余り耳慣れない事である。しかし台湾でその様な言説が存在していることを意味する。これは一体どういう事であろうか。

 李登輝元総統は尖閣諸島の帰属について総統時代から次のような旨を明言されている。つまり「尖閣諸島がどこの国に帰属するかは明確である。尖閣諸島は過去も現在も日本の領土である。尖閣諸島は日本の行政区分では沖縄県に属す」と。そしてまた李登輝総統は昨年、月刊誌『文藝春秋』誌上において次のように述べられている(※1)。

「尖閣諸島は、かつて台湾が日本の植民地であった時代から、台湾とは深い関係がありました。尖閣諸島の近海は当時から豊富な魚場でしたから、沖縄、台湾双方の漁民がそこで漁をしていたのです。沖縄の漁民からすると、獲れた魚を那覇まで持って帰るよりも、台湾の基隆や台北の市場の方がより近く鮮度の高い状態で売れる。台湾に住む沖縄の漁民も少なくありませんでした。こうした背景から、沖縄県庁は、当時の台湾州政府に漁民、漁場、それから漁船の管理を委託していました。いずれも国内の移動・売買でしたから、特段の問題はなく、ずっと慣習として続いてきました」

 かつて日本統治時代の台湾では尖閣諸島周辺での漁業関係の管理を地理的利便性から台湾州政府でも行っていたという内容である。無論、尖閣諸島が台北州へ編入されたとは語っておらず、尖閣諸島が日本の領土であるという主張に変わりはない。

 また『台湾人四百年史』の著者で最古参の台湾独立運動家の史明(本名:施朝暉)氏は月刊誌『正論』において平野久美子氏のインタビューに答え「尖閣諸島は沖縄県石垣市に属する」としながらも「戦前は台北県宜蘭郡に属していた」とも語っておられる(※2)。この点について石垣市に照会を行うと、この様な主張は聞いた事がないという返答であった。これは全くの憶測ではあるが「漁業関係の台湾州政府委託」について李登輝元総統が以前から語っていたのならば、影響力のある李登輝元総統の言葉が一般に流布される過程で「尖閣諸島はかつて台北州に編入されていたことがある」という誤伝がおきた可能性もある。
 台湾で存在する「尖閣諸島は日本によって沖縄県から台北州へ編入されたとの主張」とはこの一連の誤伝に由来するものなのか。もしくはその種の主張が意図的に行われていないとも限らない。
 現在この件については念のために沖縄県に対しても確認中(※3)ではあるが、存在していないことを証明する事は難しいとされる。「尖閣諸島の台北州編入」を証明する史料が存在する事を御存知ならば提示して頂きたいのである。

(※1)『文藝春秋』平成23年(2011)2月号所収(P284-289)
「中国とこれからの『正義』の話をしよう-尖閣 /美人を見たら自分の妻だと主張する国-」

(※2)『正論』平成23(2011)年2月号所収(p108-116)
「台湾密航の“拠点”だった尖閣の真実」

(※3)9/6 沖縄県の担当部署から有り「尖閣諸島の台湾編入」についてそのような事実を掴んでいない旨の返答が有りました。

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 永山英樹氏は尖閣諸島沖合の波間に揺れる小型船舶甲板上に立ち防水紙に「親愛的台灣朋友 尖閣確實是日本領土 日台兩國必須 共同對抗中國 保衛東海和平(尖閣は間違いなく日本の領土。日台は共に中国に対抗して東支那海の平和を守ろう)」と記したプラカードを掲げながら台灣人に向かって語りかけている。下はその際の映像である。

『影片ー現場實況傳播/致台湾朋友:尖閣諸島100%是日本領土!』

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 友人に対して誤りを指摘することは少しの勇気が必要だ。
 誰もが当たり障りのない会話をする方が楽なのだ。無用な摩擦を避けようとする心理、無難にその場をやり過ごしたい。そして一種の事勿れ主義から伝えなければならない大切な相手に口を閉ざし必要なことを黙して語らない。「御節介になるから」「その話は今この場では行わない方が良い」。よく世間でも語られ誰もが経験する「常識」である。

 台湾では1971年頃から中国国民党が「尖閣諸島は中華民国固有の領土である」と主張を始めて既に40年が経過した。長期間の国民党政権下での中国式教育、反日教育(現在台湾の73歳以上の人達は小学校以上の日本の教育を受けているはずだが、その子供達の世代は日本語と隔絶された中国式教育を受けている事になる)の結果「尖閣諸島は台湾のもの」と信じ込まされている人達もいるのだ。そのため台湾人に対して「尖閣諸島は日本領土である」という事実に関し俎上に乗せることをタブー視する向きもある。一方で中国国民党の「尖閣諸島領有権主張」問題が、1971年に米国留学中であった国民党の学生党員・馬英九氏(現総統)らにより政治的な主張として始められたという事を理解している若い人達は実に多く、彼等は「尖閣諸島は当然日本の領土です」と語り平然としたものである。

 次に紹介するのは親交のある台湾青年K君の言葉である。大の愛日家であり御祖父は関東軍に所属、祖国大日本帝国の為に戦われた。

「吾等 尊重且了解
尖閣諸島是日本國領土
歡迎祖國日本恢復對台灣行使主權」

*「主権」と「統治権」は同じ概念とされ英語では共に“Sovereignty”である。「我等は尖閣諸島が日本国領土である事を尊重し了解している。祖国日本が台湾への主権(統治権)を回復することを歓迎する」。特別なケースかもしれないが興味深く思い紹介してみました。

 今回、永山英樹台湾研究フォーラム会長(/頑張れ日本!全国行動委員会常任幹事)が尖閣諸島沖合で、敢えて「尖閣諸島が日本の領土であるという事実を理解してほしい」と訴えたのは情念めいたイデオロギーなどにとらわれることなく史実を史実として認識する事が出来る台湾人の良識を永山氏が信じているからに他ならないからだ。

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河内長野市商工会青年部オフィシャルサイト