【余談】中国共産党第18回党大会

投稿日:2012-11-09 - 投稿者(文責):mumeijin

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中国共産党第18回党大会が8日(木)から北京・人民大会堂で開催されている。

大会は7日間(~14日)開かれ、大会閉幕後に胡錦濤総書記(国家主席)は退任。直後に開かれる中央委員会第一回全体会議(1中全会)で習近辺国家副主席が新総書記に選出される。この共産党大会の様子は中国共産党中央委員会機関紙『人民日報』のweb版『人民網 』において「中国共産党の執政能力を国際社会が称賛」と題し様々な情報を日本語を含む複数の言語に翻訳、広く公開されている(*1)

共産党大会は中国共産党の指導体制や基本方針を決める最高決定機関であり、ここで党幹部である中央委員の選出や党規約の改正、その他の重要政策課題が討議される。中国共産党の党員数は約8,260万人(*2)で、この中から選出された2,268人の代表が共産党大会に出席してさらにこの中から約200名の中央委員が選ばれる。この中央委員会から中央政治局委員(現在24人)そして中央政治局常務委員(現在9人)が選出され、この9名(もしくは減員され7名か?)の中から中国共産党中央委員会総書記として習近平氏が選出されることとなる。胡錦濤政権から習近平政権への移行である。

今回の第18回中国共産党大会開催に対して友好関係にあるとされる朝鮮労働党、ヴェトナム共産党、ラオス人民革命党、そしてキューバ共産党といった共産国の政権党が中国共産党に対する祝電を送ったことを人民網は公表している。ソ連邦が崩壊し東欧共産圏が歴史から消滅して20年余り。これらは辛うじて延命している共産主義諸国である。そしてまた台湾の中国国民党も次の様な祝電を送ったことを人民網は公表している(*3)。

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―――――両党が現有の基礎の上に、両岸関係の平和的発展の成果を揺るぎないものにし、一段と交流を拡大・深化し、相互信頼を強化し、共に炎帝と黄帝(*4)の子孫の幸福を図り、両岸の明るい将来を創出することに心から期待する

台湾人そして中国人をして漢人を象徴する「炎帝、黄帝の末裔」と表現することで中国共産党に阿るあざとい態度はいかにも在台中国人が主導する国民党らしい。彼等はいまだ孫文を建国の父とみなす事を疑う事はない。その孫文が創出した概念である「中華民族」なる言葉を利用して中国人国家(中華民国、中華人民共和国)はその版図を拡大してきたのだ。そして上記の祝電に対する中国共産党から中国国民党への返電は以下の通り。ここで「台湾独立反対」が両党の共通認識であり「両岸同胞」は同じく中国人としての「民族復興」、つまり「中華民族の復興」を強調する。


―――――近年来、国共両党は共に努力して、両岸関係の歴史的転換の実現を促し、両岸関係の平和的発展という新局面を切り開いた。両党が『1992年の共通認識』(*5)の堅持と『台湾独立』反対を共通の政治的基礎に、一段と相互信頼を強化し、良好な相互作用を果たし、両岸関係の平和的発展という局面を揺るぎないものにし、深化し、たゆまず両岸同胞の幸福を増進し、民族復興の実現に新たな貢献を果たすことに期待する

我が国からは日本共産党と社会民主党、公明党支持母体の創価学会が同じく中国共産党大会に対する祝電を送っており両党が中国共産党との間で友好関係を維持していることが判る(*6)。特に日本共産党に関しては文化大革命以降、中国共産党との関係を悪化させ続けていたが不破哲三委員長時代の1998年に関係正常化を行い、現在は蜜月時代といってよい関係に有る。この点については自身がその自著『不破哲三 時代の証言』において幾分誇らしげに述懐もしている。不破氏の主要業績であるのだろうか。なお不破氏の(つまりは日本共産党全体の)台湾に対する見解とは「日本は、一八九五年に、日清戦争に勝ったというので中国から台湾をとりあげ、五十年後の一九四五年にポツダム宣言で中華民国に返した」というものであり、日本共産党が台湾は中国の一部と認識している事はホーム・ページ上の見解を確認する限り確実であろう(*7)

―――――(日本共産党)中国が改革開放を実施して以来、政治、経済、社会等各分野において著しい成果を収め、世界情勢の変化を推し進め世界の政治と経済にも大きな影響を与えた。今後両国共産党が更に協力を強化して日中間に取り残されている問題を解決し両国と両国国民の友好関係を深化させ歴史の流れに沿ってアジアと世界平和の維持に貢献したい

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―――――(社会民主党・福島瑞穂党首)中国共産党が中国国民の生活レベルの向上、世界の平和作りに絶え間ない努力をしてきたことに対し敬意を表す。去年の東日本大震災及び福島原発事故の際に、中国から送られた物資と応援などの心強い支援に再度感謝の意を表す。日中友好を維持することはアジアと世界の平和にとっても重要で双方は平和的な対話を通して問題を解決するべきだ。特に日本は、自らが犯した歴史的過ちを反省し、対話を通じて両国の友好関係の発展を強化させたい

福島社民党党首の言葉が事実だとすれば唖然 とするばかりである。海洋権益を求める為、周辺アジア諸国との紛争を繰り返し台湾併呑をも正当化する中国がいつ「世界の平和作りに絶え間ない努力」を行っていたというのだ。 社民党の確信的なまでの現状認識の歪さ、そして不見識には驚くというよりもはやその存在に疑念を抱かざるおえないのである。


(*1)「中国共産党 第十八回全国代表大会」を特集する『人民網』(日本語版)サイト。 http://j.people.com.cn/94474/204190/206190/index.html

(*2)1991年にソヴィエト連邦共産党が解党した時点での党員数は1,600万人、1990年で約1,800万人の党員を擁している。現在に至るまで中国共産党とは世界最大の政党となる。また中ソに次ぐ規模の共産党はスカルノ政権下のインドネシア共産党(党員数300万人を擁していたとされる)であったが1965年の9.30事件で壊滅。また日本共産党は党員数が32万人であることを今年5月に公表している。

(*3)「人民網日本語版」2012年11月9日記事
http://j1.people.com.cn/94474/8011770.html

(*4)黄帝、炎帝・・・五千年前の神話上の帝王とされ、漢民族の始祖とみなされ中国では特に1990年代に愛国主義的な色彩を帯びた「黄炎ブーム」が起きている。

(*5)『1992年の共通認識(九二共識)』は存在が真実だとすれば不可解な共通認識である。中国の解釈では「一つの中国とは中華人民共和国であり統一後に台湾は中国の特別行政区となる」というもの。一方馬英九氏らの主張では「一つの中国とは1912年成立し中国全土に主権を有するが現在は台湾、澎湖諸島、金門島、馬祖島に統治権を有する中華民国である。しかしその解釈はそれぞれが行う」というもの。そもそも認識が共通せず相違している。しかしこの「九二共識」により「一つの中国の原則のもと中台は関係強化につとめる」という事で両党は合意を行ったというのである。しかし李登輝氏をはじめとする台湾人の多くがこの「九二共識」自体の存在を否定している。

(*6)日本の政党・組織、第18回党大会に祝電(「人民網日本語版」2012年11月10日記事人民網日本語版)
http://j.people.com.cn/94474/8012994.html

(*7)
〇中国・台湾問題―2001年5月14日 東京・武道館での不破議長の演説からの抜粋―
http://www.jcp.or.jp/seisaku/005_0608/taiwan_mondai__.html
〇台湾の将来と「一つの中国」の関係は?
http://www.jcp.or.jp/faq_box/01-09/2001-0923faq.html


河内長野市商工会青年部オフィシャルサイト