台韓断交-1992.8.24-

投稿日:2011-08-24 - 投稿者(文責):mumeijin

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台灣と韓国が断交した1992年(平成4)8月24日から今日で十九年が経過する。当時台灣は李登輝総統が、韓国は盧泰愚大統領の時代。我が国日本は宮澤喜一政権であった。

20日の朝刊には「中韓国交 近く発表」(日本経済新聞)、「中韓、国交樹立に原則合意」「韓国、台湾と断交へ」(朝日新聞)という見出しと記事が掲載されていたが、台灣当局は19日時点で近日中の中韓の国交樹立合意を明らかにしていた。当初年内と観測されていた中韓国交樹立はこの五日後に行われ、同時に台韓は断交し台灣はアジアにおける唯一の国交維持国を失った。


【上段】左:朝日新聞夕刊(8.24)右:日経新聞夕刊(8.24)
【下段】左:朝日新聞朝刊(8.23)右:日経新聞朝刊(8.23)

【台灣の断交声明要旨】
韓国・盧泰愚政府は、台湾と韓国の歴史と伝統、友情を顧みず、九二年八月二十四日、台湾当局と協議することなく、中国と外交関係を樹立することを決定した。そのことに関し、台湾当局は盧泰愚政府に対して強い不満と憤りを持つものである。

韓国政府が中国と国交樹立を決定したことにかんがみ、台湾当局はここに、韓国と中国が国交を樹立したその日から、韓国・盧泰愚政府との外交関係を断絶する。これによってもたらされる厳重な結果はすべて、盧泰愚政府が責任を負うべきである。台湾当局は一切の権利を保有して、中韓両国に対し、の他必要な措置をとる。

→台韓の断交は同時に中韓国交樹立を意味した。以下は中韓共同声明の全文である(後述する部分には下線)。

【中韓共同声明】

一、中華人民共和国政府と大韓民国政府は両国の国民の利益と念願に基づき、一九九二年八月二十四日付で、相互承認し、大使級外交関係を樹立することを決定した。

二、中華人民共和国政府と大韓民国政府は国連憲章の原則に基づき、主権及び領土保全の相互尊重、相互不可侵、相互内政干渉、平等互恵、平和共存の原則を基礎として、恒久的な善隣友好協力関係に発展させていくことに合意する。

三、大韓民国政府は中華人民共和国政府を中国の唯一の合法政府として承認し、ただ一つの中国があるだけで、台湾は中国の一部分であるという中国の立場を尊重する

四、大韓民国政府は中華人民共和国と大韓民国政府は両国間の国交樹立が朝鮮半島情勢の緩和と安定、そしてアジアの平和と安定に寄与すると確信する。

五、中華人民共和国政府は朝鮮半島が早期に平和的に統一されることが朝鮮民族の念願であることを尊重し、朝鮮半島が朝鮮民族によって平和的に統一されることを支持する。

六、中華人民共和国政府と大韓民国政府は一九六一年の外交関係に関するウィーン条約に従って、それぞれの首都に相手方の大使館開設と公務遂行に必要なすべての支援を提供し、早い時期に、大使を相互交換することに合意する。


(三)については日中共同声明(1972.9.29)第三項「中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する」の前文と同じく、韓国政府は「台湾は中華人民共和国の領土の不可分の一部」という中国共産党政権の主張を「尊重する」が法的に承認はしていない。

なおポツダム宣言(1945.7.26)第八項とは「カイロ」宣言ノ条項ハ履行セラルヘク又日本国ノ主権ハ本州、北海道、九州及四国並ニ吾等ノ決定スル諸小島ニ局限セラルヘシ」とあり、文中のカイロ宣言(1943.11.27)の該当箇所は「日本国ヨリ千九百十四年ノ第一次世界戦争ノ開始以後ニ於テ日本国カ奪取シ又ハ占領シタル太平洋ニ於ケル一切ノ島嶼ヲ剥奪スルコト並ニ満洲、台湾及澎湖島ノ如キ日本国カ清国人ヨリ盗取シタル一切ノ地域ヲ中華民国ニ返還スルコトニ在リ」である。

この「カイロ宣言」についてはかつて国立国会図書館HPでのカイロ宣言の解説文に「1943年11月27日、ルーズベルト、チャーチル、蒋介石が署名」とあったが署名以前に原本そのものが存在しない事が判明して中国の台湾領有権の法的根拠としての価値を失っている。日本では国際的条約と思われていた「カイロ宣言」の実情は「対日戦争の戦略方針を掲げた声明文(マニフェスト)」程度のものである。カイロ声明という表現が存在する理由である。


(六)ソウル・明洞は韓国の銀座に相当する地区という事で、ここに「中華民国大使館」が位置していたが中韓国交樹立(8.24)・台韓断交(同日)後直ちに閉鎖。敷地一万平方㍍(時価250億円)の土地と建物は敷地内の孫文像と共に中華人民共和国大使館のものとなった。24日16時、中華民国の青天白日満地紅旗が大使館から降ろされ、隣接する渓城架橋学校(小学校)の在韓華僑児童八百人が小旗を振りながらその光景を見つめていた、そうです(朝日新聞8.25(火)朝刊より)

◇ 右の写真は24日朝、在台韓国大使館で韓国国旗「太極旗」を降ろす大使館職員。反共の理念で結びついていた台灣と韓国の断交と、40年前に朝鮮戦争で干戈を交えた中華人民共和国と韓国の国交樹立は電撃的に行われた。その後1998年にはアフリカの有力国である南アフリカ共和国とも断交し、現在「中華民国」を承認する国家は23ヶ国である。

中華民国外交部HP「邦交國」一覧
http://www.mofa.gov.tw/AlliesIndex.aspx?n=0757912EB2F1C601&sms=26470E539B6FA395

◇金 淑賢『中韓国交正常化と東アジア国際政治の変容』明石書店(http://www.akashi.co.jp/book/b66151.html

が第五章で「韓台断交」を考察しています。台湾と韓国の断交について日本語で読むことが出来る数少ない論説です。なお著者の金 淑賢氏は小沢一郎氏の元女性秘書としても知られている。

 


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