何故、沖縄県のNHK受信料は安いのか(前篇)

投稿日:2013-04-29 - 投稿者(文責):mumeijin

このエントリーをはてなブックマークに追加

.


沖縄の本土復帰(米国施政権下から日本への主権返還)が成就された昭和47年(1972)5月15日まで、沖縄で公共放送といえばOHKであった。

沖縄放送協会(OHK)の設立は昭和42年(1967)10月2日、本社所在地はアメリカ合衆国沖縄豊見城村字高安1019番地。

沖縄の本土復帰に伴いOHKは解散、その機能と業務はNHK沖縄総局と統合しNHK沖縄放送局が復活した。復活というのは、昭和20年3月まで沖縄にはNHK沖縄放送局が存在したからである。しかし沖縄空襲とそれに続く米軍との沖縄戦によりNHK沖縄放送局は閉鎖を余儀なくされた。これはNHKだけの事ではない。世界史上に残る激戦のなか沖縄県庁、沖縄県警察部等の組織が壊滅した(*1)。

このOHKは受信料を取っていなかった。NHKとは異なり無料放送であったのだ。

沖縄にNHKが戻ってくるのは1961年(昭和36)10月の事である。NHK那覇通信局が開設されたが、米国統治下であった為に現在のNHK台北支局やソウル支局と同じく海外支局の扱いであった(*2)。この那覇通信局は昭和39年に改編されNHK沖縄総局となり先述の様にOHKと合流する。

本題である。

沖縄県のNHK受信料は他の46都道府県より低く設定されている。
例えば沖縄県の衛星契約(含地上契約)の受信料は2,015円/月である。これが沖縄以外では2,170円/月となる。同条件での「一年前払受信料額(要は「一時払/年」)」で比較すると沖縄県は1,720円安い。

○沖縄県以外   ・・・・24,090円/年(*3)
○沖縄県    ・・・22,370円/年(*4)

沖縄県のNHK受信料がなぜ他の46都道府県よりも若干低く抑えられているのか。
NHKに説明を求めると概ね次の二点が理由である、とのこと。
①「無料放送局であったOHKからNHKへ到った特殊な経緯」
②「沖縄県民の県民所得が47都道府県で最も低い」

①についてはそう理解したとしよう。
②についてはどうであろう。

確かに沖縄県は平成20年度まで県民所得(*5)は20年連続で最下位だった。
だが平成21年の最下位は高知県(2,017千円)である。なお一位は東京都(3,907千円)
しかしその間高知県のNHK受信料が下がった事実はない(*6)。
そもそも県民所得は毎年変動が有るのだからNHKによるこの説明は信を置くことは出来ない。最下位常連県であるという理由で有ればそれも沖縄に礼を逸した発想と言える。

———————————————————————————–以下余談、読み飛ばして下さい—
.
沖縄県(及び離島)で公共料金が飛び抜けて安いものとして自賠責保険(自動車損害賠償責任保険、いわゆる強制保険)が挙げられる。

今年4月1日付で改訂された自賠責保険料だが、「本土用保険料」では自家用普通乗用車の継続車検時の自賠責保険料は27,840円である。これが「沖縄用保険料」では同条件で12,890円と1/2以上安くなっている。原付自転車の場合「本土で3年契約」の場合12,410円、「沖縄で3年契約」は5,070円と相当安い。また沖縄県は自動車保険(いわゆる任意保険)自体に沖縄料率が適用されるので、ここでも安い保険を購入(加入)することが出来るのである。

これを以て沖縄県の交通事故発生率、自賠責保険使用率が低いという訳ではない(「交通事故」の定義には幾つもの指標があるが)、沖縄県よりはむしろ鳥取県や島根県といった過疎県の方が総じて交通事故発生率は少ない。この点については多くの人が抱く印象通りではないだろうか。

沖縄県は平成23年度「運転免許保有者10万人あたりの飲酒運転事故件数」は47都道府県で一位である(一番飲酒運転事故が多いという事である。一番少ないのは東京都で岩手、神奈川、山口が続く(*7)この傾向は平成2年(1990)から22年連続であり全国最悪、と昨年1月末に琉球新報が報道している(*8)。

飲酒運転下での事故とは、過失犯ではなく故意犯である。
飲酒後の運転を避けさえすれば飲酒事故は起こらない訳であるから悪質といえる。「飲酒に寛容」ではもはや済まされない。少子高齢化による自動車保有台数の減少で自動車保険の収支が合わなくなる、もしくは保険料が大幅に増加する(これは既にそうなって来ている)、また民間企業である損害保険会社は倒産の可能性は皆無ではない。よって任意保険の沖縄料率が何時までも存続するとは限らない。

この様な土地柄でなぜ自賠責保険、自動車保険料料率が低く設定されているのか、納得出来る答えを聞いたことが無い。「事故が少ないから」という説明がよくなされるが逆である。「悪質な飲酒運転での事故が全国一多く、それが常態化した県」が沖縄である。

—————————————————————————————————(余談終)————

誰もが明瞭な説明が出来ない「沖縄割引」。その為に「米軍基地の存在」、「県民ニ対シ後世特別ノ御高配ヲ賜ランコトヲ」などによる特別な配慮であるとする考えがあるが、真偽は不明としか言えない。

それでは47都道府県で唯一特例措置で受信料が低く設定される沖縄県の支払率は全国で何番目であろうか。

NHK公表の「都道府県別推計世帯支払い率/平成23年度末」という資料がある(後篇表/*9)。
これを信じるならば沖縄の受信料支払い率は全国最下位42.0%である。次に大阪が続く(最高は秋田県94.6%)。

但しNHKは不払率を低く公表する傾向が有る(実態を公表すると支払者の不公平感が際立ち、不払いが加速するからと言われる)事が以前から指摘されているので割り引いてみる必要が有りそうだ。実際には公表データより低いと思われる。

NHKは事あるごとに「受信料の公平負担の徹底」を強調する。にも関わらず唯一受信料が優遇されている沖縄県が支払最低県なのである。

これでは筆者の様に欠かさずNHK受信料を支払い続けている者からすると、鼻白むと共にどうも不公平な制度に思えてくる。NHKの受信料については「一度も支払った事がない」「NHKの不祥事多発に怒り心頭したので解約した」など多くの不払者の声を聞く。厳然としてNHK受信料支払者と不払者との間には不公平感が発生しているのだ。(続)


河内長野市商工会青年部オフィシャルサイト