『台湾独立建国運動の指導者黄昭堂』『日本と台湾/なぜ両国は運命共同体なのか

投稿日:2013-09-04 - 投稿者(文責):mumeijin

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台湾独立建国運動の指導者 黄昭堂自由社 平成25年8月刊 1,575円

その生涯の最後まで台湾独立運動の先頭に立ち続けた黄昭堂台湾独立建国連盟主席(1932-2011)が急逝されたのは二年前の平成23年11月17日の事である。李登輝元総統が体制内からの台湾民主化を強力に推進したのに対し、黄昭堂氏はその生涯を台湾民主化と中華民国体制を打ち破り台湾国の建国を悲願としてその生涯を捧げた。

本書は張炎憲氏(元国史館館長)、陳美蓉による黄昭堂氏へのOral history(聞き書きに依る記録)の手法を用い、昨年3月台湾で『建國舵手 黃昭堂』として刊行されたものの日本語版である。本書での蔣経国に対する李登輝と黄昭堂それぞれの評価の差はそれぞれの立場(方や体制内指導者、方や戒厳令時代の非合法組織「台湾独立建国連盟」の指導者)の差を顕著に示しており、ここに一部引用する。

―――蔣経国に対する評価は、李登輝と私では全く違う。李登輝は『蔣経国総統と私』のなかで、「私は、蔣経国を師と仰いだ」と書いているが、これは完全な間違いだ。蔣介石は独裁者であり、命令を下す役割を演じたが、実際にその命令を執行したのは蔣経国であった。1950年から1980年代初期に至る「白色テロ」時代、特務の大ボスとして、蔣経国は恐怖政治で台湾を支配した。蔣介石は1975年に死んだが、1979年12月から翌年春まで、美麗島事件、林義雄の母と幼女の暗殺、台湾キリスト長老教会弾圧と、一連の大弾圧を命じたのは蔣経国であった。それにもかかわらず、台湾人は抵抗し続けたので、蔣経国は死ぬ半年前の1987年になって、38年間も続けた戒厳令を解除せざるを得なくなり、「私は40年近く台湾で暮らしてきたから、もう私も台湾人だ」と言ったのだ。蔣経国は、父に勝るとも劣らない悪辣で残忍なだったのである(本書p313~314)―――

李登輝氏と黄昭堂氏は親密な間柄であったことは知られている。しかし政治家 李登輝が複数の顔を使い分けていた事は当然であり、その為発言は変幻自在なものになる。2001年の国民党党籍剥奪後は国民党への批判を躊躇する事はない反面、蔣経国への批判というものは殆どない。なお李登輝氏のさり気ない蔣介石評価に次の様なものが有る。

―――日本人は蔣元総統の「以徳報恩(徳を持って怨みに報いる)」との言葉と戦後賠償の蜂起に感謝するが、国民党政権が戦後台湾で接収した日本時代の資産は工業インフラや不動産など、賠償以上の価値があった(2005年8月発言 産経新聞報道)―――

黄昭堂氏による率直で時に辛辣な人物評(例えば廖文毅、王育徳、辜寬敏、金美齢、周英明、史名、衛藤瀋吉、李登輝、鄭南榕、張燦鍙、赤尾敏、中村輝夫、遠山景久、邱永漢 、高俊明牧師)や彼の周辺に集う日台の台湾独立活動家や「不審な者達」などの初めて聞く挿話が多く収録されている。しかしながら生涯を台湾建国に求めた黄昭堂氏により繰り返し語られる困難のひとつが慢性的な資金不足で有ったことは何とも切ない。

本書は行動力と知性、魅力的な人望、これらを兼ね備えた不世出の台湾独立指導者の記録として貴重な史料と成るであろう。


『台湾独立建国運動の指導者 黄昭堂』の出版元は自由社。その自由社社長の加瀬英明氏は「日本李登輝友の会」の副会長であり、先日祥伝社より『日本と台湾/なぜ両国は運命共同体なのか』を上梓されておられます。

日本と台湾 / なぜ、両国は運命共同体なのか加瀬英明 祥伝社 平成25年9月刊 840円

知っている様で、誰も知らない本当の「台湾」
〈本書目次より〉

序章 台湾は中国ではない ~その成り立ちと歴史~
1章 世界で唯一「日本」を理解する国 ~戦前の日本統治は何を遺したか~
2章 蔣介石は台湾で何をしたのか ~知られざる暗黒の国民党統治~
3章 米中、日中に翻弄される台湾 ~世界で最も虐げられた国の悲劇~
4章 馬英九政権の行方 ~台湾でいま、何が起こっているのか~
終章 「日本と台湾」の将来 ~なぜ両国は、運命共同体なのか~

■台湾を守ることが、イコール日本の安全につながる台湾の本当の歴史と現実を、日本人は知らない。アメリカ人はもっと知らない。

歴史的にも文化的にも、台湾は中国の一部ではない。歴史上、中国が台湾全土を統治したのは、日清戦争前の20年間にすぎなかった。

中国の台頭と剥き出しの野心によって、いまや窮地に立つ台湾。それもやむなしの大勢となりつつある国際世論。

だが中国の台湾吸収は、日本にとっても対岸の火事ではすまされない。国内随一の知台派であり、台湾の消滅は日本の亡国につながると焦慮する著者が、豊富な台湾人脈を駆使して、その真の姿に迫る。


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