【書巻紹介】小学館 『八田與一 ~東洋一のダムを作った日本人~』

投稿日:2012-10-30 - 投稿者(文責):mumeijin

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(左)『小学館版 学習まんが人物館 八田與一』
(右)八田與一[明治19年(1886)-昭和17年(1942)]

八田與一自身は当時から尊敬を集めていた人物だったことは間違いありません。死後に評価される人も多いのですが、生きているときから、現地の台湾人からも日本人からも慕われていたのを、小学生ながらに感じることができたほどでした。  [解説]八田綾子著「烏山頭の思い出」より


「民族の誇れる話、立派な人物の話を話し聞かせてあげると良い心持の子供に育ち、一方あまり悪い話や罪悪感を植え付けることを目的とした教育を行うと卑屈と萎縮といった悪しき影響を子供に与える。そのため偉人やその業績について子供達に話し聞かせることは良い事である」という意味のことを耳にしたことがある。そういうものかもしれないと納得したものだが、言霊の点からもそれは真実なのかもしれない。

台湾では知らぬひとがいない人物でありながら、当の日本では未だ無名に近い存在の日本人がいる。

石川県河北群華園町(現在の金沢市)生まれの人、八田與一(ハッタ ヨイチ)氏である。日本統治時代の台湾で雨季には集中豪雨、乾季には旱魃が繰り返されていた不毛の地であった台湾西南部・嘉南平原を烏山頭水庫(ダム)と嘉南用水路を建設する事により緑の穀倉地帯に変えた人物として八田與一氏は現地で深い尊敬を集めている。

昨年5月、台湾では「中華民国建国百年」記念事業の一環として八田與一記念公園が開設されており、今年5月には彼を顕彰する記念切手が発行されている。繰返しとなるが八田與一氏は不世出の土木技師であったが我が国では無名の人物である。


2011年5月(発行日は6月1日)に学習まんが 『八田與一  ~東洋一のダムを作った日本人~』として八田氏の伝記が小学館から出版されており、今回紹介した次第。

本書の監修者・許光輝先生は八田與一氏の郷里にある金沢大学へ留学、台湾警察専科学校助教授。現在は沖縄県に在住しながら烏山頭ダムを世界遺産に登録する運動を行っている。また基隆・和平島公園内の「琉球漁民慰霊碑」建立の発起人でもあり(*1)、先の大戦において東京大空襲・広島原爆・長崎原爆等で亡くなられた台湾人犠牲者を慰霊する「全国台湾人戦没者慰霊塔」を日本で建立するに向けて計画されている行動のひと。

八田技師の一大業績である台湾・烏山頭ダム建設を、小学生(中学年位か)にも理解出来る本書。台湾で尊敬されている八田與一氏についてより多くの子供達に知って貰う為に全国の小学校図書室蔵書として加えて頂きたいと同時に、「購入希望図書制度」等を利用して各自治体図書館へも要望を出して頂きたい。私達の父祖の世代が行った業績を是非ともこれからの日本を担う子供達にも知って欲しいのである。

なお本書とは別に八田與一技師の業績を描いたアニメ作品『パッテンライ!! 南の島の水ものがたり』(*2)があり、こちらは北國新聞社(金沢市)の出資により四年前に公開された良作である。このアニメ作品も決して広く公開されているとはいえない現状である。出来ればこちらも多くの日本人に観て頂きたい。

八田與一はその悲哀の最期を以てさらに私達に強い印象を残す。
日米開戦から五ヶ月目の昭和17年5月8日、フィリピン赴任のために乗船していた輸送船・大洋丸は米潜水艦の攻撃を受け東シナ海で沈没。八田與一氏は56歳の生涯を終えた。今年は八田與一技師没後70年にあたる。毎年5月8日には八田技師が建設を指揮した烏山頭ダムのほとりで日本と台湾の人々により慰霊祭が行われている。


烏山頭ダム全景


(*1)基隆・和平島公園の「琉球漁民慰霊碑」除幕(『フォーカス台湾』2011/12/01)
http://japan.cna.com.tw/Detail.aspx?Type=Classify&NewsID=201112010011

(*2)北國新聞社 発行 『パッテンライ!! 南の島の水ものがたり』
「第23回土木学会映画コンクール最優秀賞・土木学会土木技術映像委員会選定作品」


『小学館版 学習まんが人物館 八田與一』(160頁/1,155円)
[監修]   許光輝[八田與一文化芸術基金会]
[漫画]  みやぞえ郁雄
[シナリオ]平良隆久
【Amazon】 小学館版学習まんが 八田與一商品ページ


河内長野市商工会青年部オフィシャルサイト