◇鳩山由紀夫元首相、中国の旅

投稿日:2013-01-17 - 投稿者(文責):mumeijin

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Pacifist[pǽsəfist]

一般に「平和主義者」と訳される。近年「平和主義」には侵略者に対する抵抗の為の自衛行動をも否定する「絶対平和主義」の意味を持たせるようになり揶揄、中傷の意味を含むという。「平和主義者」だけではなく、消極的で無意志であることを良しとする「宥和主義」「妥協主義」のニュアンスをも有するからである。極端なパシフィストは「国境が無ければ世界は平和になる」「軍隊を廃止すれば戦争は起きない」もしくは「憲法を改正すれば戦争になる」といった根拠の無い空想論を振りかざす。

ネヴィル・チェンバレン英国首相は当初「救国の宰相」として持ち上げられていたことを思い出さなければならない。現在ではナチス・ドイツの侵略の意図が明らかになってもなお宥和政策を取り続けた結果、ヒトラーの欧州侵略に手を貸したとして批判を受け、ある種のパシフィストの一例として長らく引き合いに出されている(*1)。この絶対平和主義者(パシフィスト)による平和維持、平和構築に対する無気力さがむしろ戦争を拡大させるという逆理が指摘されている。

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中国側の招聘により15日から訪中している鳩山由紀夫元首相は北京で唐家璇 中日友好協会会長と会談した。

多くの日本人にとり唐家璇氏といえば「靖國神社参拝は止めなさいとゲンメイ(言明、厳命)しました」の発言者であろうか。台湾人にとり唐氏は外交部長時代「(台湾大地震「921大地震」の発生に絡めた)台湾は中華人民共和国の一省、台湾省である」と発言して反感を持った人物として記憶されているかもしれない。

1999年(平成11)9月21日台湾中部南投県付近を震源地とするM7.6の巨大地震が発生した。死者・行方不明者2,445人、台湾史上最大の規模となった9.21大地震である。地震発生22時間後に日本の国際消防救助隊隊員145名が現地入りしたことが評価されてきたが、地理的にそして心理的に最も近いということもあり日本が他国より優れているという事ではないだろう。

何より当時の李登輝総統の危機時における指導力が秀でていたことは特筆され危機管理の好例として評価も高い。その李登輝元総統は著書で次の様に述べている。「国際社会は相互支援の社会で、我々が力の有る時に他人を助ければ、我々に支援が必要な時にも助けて貰えるのだ」(『台湾大地震救災日記』PHP研究所(2000年))。これこそがまっとうな人間の発する言葉である。

しかしそれに相反する行動を取っていた国があった。中国である。9.21大地震発生後の中国共産党の態度は最悪であった。中国の非道な仕打ちを李登輝元総統が前掲書で指摘している。例えばこうである。

〇国連による援助活動は事前に必ず中国に通知せよ。なぜなら台湾は中国領であるからだ
〇援助を表明する国々に対しては「台湾は中国の一部であるので、援助は中国を経由して行え」
〇義援金を中華民国名義で台湾に送金してはならない。
〇ロシア、ヨルダンの救援専用機の中国上空の通過を認めず、救援の時間を大幅に遅らせる

支援どころではない、妨害である。これが「台湾同胞」に対する中国共産党のやり方だ。これにより中国は国際的な信用をさらに低下させ、中国の陰湿な態度を目の当たりにして震災で失意にあった台湾人がむしろ奮起し、試練のもと希薄とされた台湾人意識の形成を加速させたというのだから世の中とは時に案外公平なところがある。
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鳩山元首相のことである。昨日(16日)に賈慶林 人民政治協商会議主席(前政治局常務委員)、楊潔篪外相と会談を行っている。

昨年9月27日、日本政府が尖閣諸島の国有化後に米倉弘昌日本経団連会長を筆頭に日中友好七団体トップを務める国会議員(河野洋平氏、加藤紘一氏を含む)らに率いられた訪中団があった。米倉訪中団が態度を硬化させた中国共産党のどの序列の人物と会談が出来るのかが注目されていた。
この時に日本友好人士の体面を保たせるために会談の相手として選ばれたのが中国共産党指導部メンバー(共産党政治局常務委員)ではあるが政治的には引退が決まっていた賈慶林氏であった。日本の尖閣諸島国有化を強く意識して笑顔を見せることなく仏頂面の賈慶林氏と懸命に御機嫌を窺う日本側友好団体のメンバー達の空々しい会談の様子を覚えている方もおられるかもしれない。こういった場面で応接役として登場する人物というイメージがある。

鳩山元首相の中国訪問を注視していた大方の予想通り、鳩山氏は次の発言を行っている。賈慶林主席ら中国側からは歓迎され各媒体でトップ記事として宣伝工作に利用されている(*2)

―――――(鳩山発言、私人の立場での発言であると前置きしたうえで)日本政府は「領土問題は存在しない」というが、歴史を眺めれば分かる話だ。今係争が起きていることは事実で、お互いに認めることが大事だ。領土問題は存在しないと言っていたら、いつまでたっても答えは出ない

歴史を眺めれば分かる話が有る。1895年1月14日、日本は尖閣諸島の無主地であることを確認したうえで先占を行い日本領土に編入、政府の許可のもと日本人移民による鰹節製造といった事業経営が行われ尖閣諸島は開拓が行われた(実効支配)。その過程で清~中国からの異議申し立ては皆無であり、彼らが一度たりとも実効支配を行った歴史はなく、中国共産党、中国国民党が尖閣領有を主張し始めたのは1971年になってからである(*3)。また元総理大臣を務めた人間の発言は少なくとも私人ではなく元首相のものとして評価される。そして世間智のある者ならば中国で「尖閣諸島は日中間の係争地」という発言は行わない。利用されることが明らかだからだ。しかし鳩山氏の中国への説明は先日の丹羽宇一郎前中国大使のものと奇妙に同じであるのが気になる(*4)。

本日(17日)安倍晋三首相が中国牽制も兼ね第二次安倍内閣の初外遊先としてASEAN加盟国のヴェトナム、タイそしてインドネシア訪問に出発したその頃、鳩山由紀夫氏は江蘇省南京市の「南京大屠殺紀念館」を見学し合掌低頭する姿が中国系メディアで大きく取り上げられている(*5)。こうして鳩山氏は存分に中国共産党の期待に応える働きをおこなった。なお「鳩山氏側は習近平総書記との会談を求めていたが、今回は実現しないとみられる(日本経済新聞1/16報道)」とのことである。

確かにそこまでする必要もないだろう。中国共産党でなくともそう思う。
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平成21年(2009)8月31日(月)の日本経済新聞と産経新聞(朝刊)

鳩山由紀夫氏の愚行を批判する事は簡単である。しかし日本国民は自らの行為についても忘れない方が良い。選挙を通じてこの人物を首班とする政権誕生に加担していたのだから。
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(*1)そのチェンバレンはドイツによるポーランド侵攻の翌々日(1939年9月3日)に対独開戦を決断、宥和政策の失敗に気付いた時が遅すぎたのだ。翌40年チェンバレンは辞職、W・チャーチルによる挙国一致内閣が成立。

(*2)中國評論新聞網「日本前首相鳩山承認 釣魚島存在領土爭議」http://www.chinareviewnews.com/doc/1024/0/5/2/102405201.html?coluid=7&kindid=0&docid=102405201

(*3)我が国外務省による「尖閣諸島についての基本見解」が簡潔で正確であろう
http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/senkaku/kenkai.html

(*4)「丹羽宇一郎 前中国大使の不見識」
http://ilha-formosa.org/?p=23222

(*5)
中國評論新聞網
〇「鳩山向中國民眾被害照片雙手合十低首默哀」http://www.chinareviewnews.com/doc/1024/0/5/2/102405201.html?coluid=7&kindid=0&docid=102405201

中国新聞社東京支局
〇「鳩山元首相、南京虐殺記念館で「心からお詫び」…“友紀夫”と署名」http://www.chinanews-jp.com/news/disp.cgi?y=2013&d=0117&f=politics_0117_012.shtml&mb=cns
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